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理事長挨拶

日本放射線影響学会理事長
藤堂 剛

 この度、広島大学原爆放射線医科学研究所 稲葉俊哉教授におかれましては、日本放射線影響学会第59回大会長をお引き受けいただき、会員を代表してお礼申しあげます。
 本学会は、昭和29年太平洋ビキニ環礁において米国により実施された水爆実験で被災した第五福竜丸事件を契機に設立され、放射線の人体と環境に与える影響を、分野横断的に様々な角度から捉えようと、物理・化学・工学・生物学・医学といった多様な分野の研究者が集まり議論する場を提供して参りました。この様な分野横断的研究者の集まりは、単に放射線の人体・環境影響を評価するのみでなく、その生体影響の根本要因を生物の基本原理に基づき理解する基礎学問としての一面を拡充させました。この様な経緯から、本学会は、応用と基礎との間を繋ぐ領域としてその責務を果たしつつ、発展してまいりました。
 19世紀から20世紀にかけての物理学の爆発的な発展により、人類は放射線を手に入れ、その後様々な分野においてその利用法を開発してきました。様々な計測や原子力発電といった工学的利用、診断・治療といった医療での利用等、現代社会は放射線との関わり無しには成り立たないといっても過言ではない程、社会生活において多面的に放射線が利用されています。一方、放射線の利用は人類への予期せぬ放射線被曝の機会を増加させました。広島・長崎における原爆被曝、本学会設立の契機となったその後の水爆実験に加え、2011年に発生した福島第一原子力発電所事故は、記憶に新しいところです。福島第一原子力発電所事故につきましては、本学会においても多くの会員が研究面に限らず様々な活動を続けております。
 今大会では、稲葉大会長により「福島から5年、放射線影響学は今」とのテーマを設定いただきました。福島第一原子力発電所事故から5年経ち、今だに多くの方達が帰宅できない深刻な状況が続いています。一方、環境・人体への影響研究についても、測定データが集積する中、新たに提起される問題点も多く、更なる研究の進展が待望されています。本テーマは、「ここで一度立ち止まり5年間を振り返り、未来へ跳躍するタメを作る」とのご意向での立案です。研究を粛々と進める事により研究を深めると同時に、その結果を社会に発信する事が、学会活動の両輪です。事故から5年後のこの時点で適切なテーマを掲げていただいたと感謝しております。
 どうか会員諸氏におかれては、闊達な議論により実り大きな大会として盛り上げ、今後の放射線影響学の発展に寄与していただくよう心からお願い申し上げます。



大会長挨拶

広島大学原爆放射線医科学研究所
教授 稲葉俊哉

 日本放射線影響学会第59回大会を平成28年10月26日(水)~28日(金)の期間、広島市・JMSアステールプラザを会場に開催させていただくことになりました。広島大学や放射線影響研究所所属の日本放射線影響学会会員に実行委員を、全国の各分野の専門家にプログラム委員をお引き受けいただき、鋭意準備を進めているところです。
 人類が放射線の存在を認識してから120年の歳月が経過しましたが、日本放射線影響学会は私の生まれ年である1959年に創立されました。20世紀の放射線影響研究は、動物実験の材料が犬から遺伝子改変マウスへと進化し、分子細胞レベルでの研究が主流になるなど大きく変遷しましたが、その中心は、原子爆弾やチェルノブイリ原子力発電所事故などを念頭に置いた高線量被曝影響研究でした。
 こうした中、2011年に発生した福島第一原子力発電所事故により、帰還困難地域に居住されていた数万人の方々が未だに帰宅できない深刻な状況が続く中、低線量放射線影響研究の推進が叫ばれ、放射線影響研究は遺伝子・分子レベルの研究へのシフトに続く第二の転換期を迎えた感があります。しかしその一方で、低線量放射線影響研究を軌道に乗せ、将来を見通すことが必ずしも容易ではないことも明らかになってきています。加えて内部被曝研究や、懸念される高線量被曝事故対応など、福島原発事故をきっかけに特段の研究の進展が待たれている課題が山積しています。
 今大会のテーマ「福島から5年、放射線影響学は今」は、ここで一度立ち止まって5年間を振り返り、未来へ跳躍する「タメを作る」機会にしたいとの考えから設定いたしました。申し上げるまでもなく、放射線影響学の持つ広い間口をそのまますくい取り、様々な側面を俯瞰して実り多い大会にしたいと考えております。また、優秀演題賞を設定して懇親会の席で選考結果を発表するなど、本学会誕生後に生まれた若手の研究者に奮ってご参加いただき、大会を盛り上げていただけるような工夫をしてまいります。
 シンポジウムやワークショップの公募を皮切りに、一般演題やその他の企画につき、順次、募集等のご連絡を差し上げます。多くの会員のご参加を得て、有意義な学会にしたいと熱望しておりますので、どうか宜しくお願い申し上げます。